コピーの裏側

乳がんだと言われた日、何を思うだろう、
誰に一番に話すだろう、今日、想像から始めよう。

 
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第14回ピンクリボンデザイン大賞の優秀賞作品です。「長いコピーは、不利」という考えが、このコピーを見て、少し変わりました。短いコピーの方が、インパクトは強くなりますが、長いコピーであっても、きちんとメッセージが伝われば、ちゃんと響くものになると気づかされました。このコピーは、読むだけで「乳がんのことを想像する」というピンクリボン運動を実施させてしまう、まさに行動を促すコピーになっていると感じました。早速、このコピーの作者さん、梅津さんにインタビューしていきます!

自己紹介をお願いします!

はじめまして、今年の1月からコピーライターとして制作会社で働いています梅津 遥(うめつ はるか)と申します。
株式会社宣伝会議さん主催の「コピーライター養成講座(札幌11期)」を卒業してコピーライターに転職しました。以前は月刊誌を作っている編集部で進行管理のお仕事を担当していました。
この度は、こんな光栄な機会をいただき恐縮です。どうぞよろしくお願いいたします。

 

ピンクリボンのコピーを応募したきっかけは、なんですか?

ピンクリボン運動のことは知っていたのですが、コピーの公募があることは養成講座の中で知りました。個人的な話ですが、昔は心理カウンセラーを目指していたこともあり、病気予防の啓発やACの広告などに強い関心があり、乳がん予防の啓発のためのコピーは純粋に「書きたい!」という気持ちになり挑戦することに決めました。

 

心理カウンセラーは、なぜ目指そうと思われたのですか。

幼い頃に何度も、“親や先生以外の相談相手がほしい。それも、きちんとした専門家の人がいい”と感じることがありました。私自身の家庭の問題だけでなく、友人から相談を受けることも多かったのですが、いじめや人間関係のことに限らず、発達障害や虐待、性的自認についてなど、今考えると専門家の介入が必要だったと思います。でも、子どもの頃は家と学校だけが自分の世界の全てで、親をはじめ、学校の先生にも保健の先生にも相談できなかったり、相談しても根性論的な回答が返ってきて、そのことへの違和感が子どもながらにずっとあったんです。将来の職業を考える年齢になった時に「じゃあ自分がその専門家になろう」と考え、臨床心理士(一般的な呼び方は心理カウンセラー)という職業を目指そうと決めました。

 

心理カウンセラーを目指していた経験が、コピー制作に役立ったことは、ありますか?

私は、心理カウンセラーの勉強をする=コピーが上手に書けるという、イコールの関係性はないと思っています。でも、心理カウンセラーにもコピーライターにも共通するのは、言葉の力を信じていて、言葉の怖さも知っていること。あとは、全ての経験が仕事に生きるところかもしれません。

また、役立つという意味では、大学院の頃に何本か論文を書いた経験はそのまま文章を書くことの勉強に、学会での発表経験はプレゼンの勉強になっていると思います。あとは、私は天才型とは真逆で、とにかく量を書くことで何とかやってきたので、勉強癖がついていることは今の職業にも役立っているんじゃないかなと思っています。広告には認知心理学の知識は絶対に活かせると思うので今後きちんと勉強したい気持ちはあるのですが、全然コピーのこともわかっていないので、まずはコピーライターの先輩方の本を読み漁るというところからですね。

大学院の頃、病院実習や、小学生から高校生のカウンセリングを一年以上していました。その中で、現実はつじつまがあわなかったり、自分の想像の及ばないことだらけだ、自分の想像できる範囲なんて本当にわずかなんだと心底痛感したんです。そのことは、自分のコピーに影響を与えている大きな学びの一つだと思います。書いたコピーを見返す時などに、そのことを頭に置いて考えるようにしています。こんな偉そうなこと書いて、講座の講師の方には「全然できてないだろう、お前のコピー」と怒られそうですが…(笑)そういう心がけはしています。

 

受賞作品は、自信のあったコピーでしたか?

自信はありませんでした。でも最終的に、絶対出したいと残したコピーではありました。
当時、講座生の中で希望者を募り、ピンクリボンデザイン大賞のコピーに挑戦するメンバーで自主勉強会のようなことをしていたんです。また、個人的には応募前にも現役のコピーライターの方に書いたコピーを見ていただいていました。応募後にも、そのメンバーの中で匿名で投票を行ったりもしていたのですが、受賞したコピーは、講師の先生からも受講生からも評価されなかったコピーでした。だから、もし応募数が決まっていたら、外していたかもしれません。当時は特に「コピーが無駄に長い」という指摘を何回か受けていた時期で、コピーの長さに苦しんだ時期だったので…。でも、褒められなかったこのコピーを残して応募したのは、自分の素直な気持ちを書いたコピーであったこと。そして、このコピーを見て、検診に行くという行動までは直接つながらなくても、“乳がんになった生活”を自分ごととして想像してみる人が大多数ではなくても必ずいるはずだ、という気持ちがあったからです。

 

どのような発想で、受賞作品が誕生したのですか?

→そもそも「検診に行くのがいい」と言っても自己チェックでもいい年齢の人もいるなあ
→検診に行くのにもお金がかかるし…行かないと怖いことになると言われても…行かないよなあ
→じゃあどうしたら行くかな?
→ってか、なんで行かないのかな?
自分がなるって思ってないからだ。
→男女どっちもなるのに、女性だけの問題ってイメージもある。ガンなのに、胸の問題ってイメージもある
→まずは、乳がんを自分ごととして考えてもらう必要がある
どうしたら自分ごとになるかな?
→例えば自分が乳がんを疑う場面は?
→お風呂で違和感を感じる?その後どうする?
→病院に行く。もし乳がんだったら、病院の中で医師からレントゲンを見せられながら重苦しい雰囲気で告知される
告知された時のことを想像してみよう
→私、誰に一番に話すかな?旦那さん?親…は無理。いろいろ整ってからじゃないと。
→仕事どうしよう。手術するの?有給どれくらいあればいいんだ、って休職?
→たくさん一気に頭をかけ巡って、いきなり現れた乳がんという事実にとにかく対処しなきゃって、いっぱいいっぱいになるなあ
→具体的なシーンを想像してもらうきっかけになるコピーを書こう

………という感じでした。

 

実際に受賞されて、いかがでしたか?

今回このコピーで賞をいただけたのは、自分にとって、とても大きなことでした。他の受賞者の皆さんのコピーも、もちろん全部拝見しましたが、私のコピーが圧倒的に長かったので、長いということに苦しんでいた気持ちは少し薄らぎました。でも、同時に「女の勘は、誤診する。」というコピーが最優秀賞を受賞されていたのも、私にとっては大きかったです。短くて納得感のあるコピーはやっぱり強いなと実感しました。こんな賞をいただけるのは人生で一度きりかもしれないと、東京の表彰式にも見に行ったのですが、壇上にあがれるのは最優秀賞の方だけ。やっぱり悔しい気持ちもあり、賞をとるために書いたコピーではありませんが、最優秀賞をいただくということは、多くの人の目に触れるところで展開していただける可能性も高かったと思うので、今回書いたコピーも誰かに届くものになりたかったなという気持ちもありました。

最後に、今回このような機会をいただけたことで、改めて当時の気持ちや自分がコピーを書く時に考えていることなどを振り返るきっかけとなりました。ありがとうございます。そして、取り上げていただけたことで読者の皆さまにはもう一度このコピーを見ていただくことができ、ヒヒ馬さんには心から感謝しています。本当にありがとうございました。

 

インタビュー後記

お読みいただいて、お分かりいただけたと思うのですが、梅津さん、真面目!(もちろんいい意味で)「賞を取りたい」ではなく、「乳がん検診率を、どうやったら増やせるか」という難しいテーマに、きちんと正面から向き合っているのが、インタビューからも、コピーからも伝わってきます。

「自分の想像できる範囲なんて本当にわずかなんだということを想像してコピーを書く」言い換えれば、「相手のことを簡単に分かったつもりで書かない」ということですよね。「女性は、どうせこういう思想」「男って、こんなこと思ってるんでしょ?」と、にじみ出ているような作品って、結構ありません? 梅津さんのこの”謙虚”な想像力を、見習って取り組みたいと思いました。

また、梅津さんのコピーの発想には「自分だったらどうだろう?」が、ちゃんと入っています。「乳がん検診率を増やしてやろう」という上から目線ではなく、「どうやったら、まず自分が行きたくなるか」という同じ目線から考えて、出てきた提案型のコピーですよね。レトリックだけではなく、きちんと正面から向き合っていることが分かります。「このメッセージをどうしても伝えたい!」という、熱い思いがあったからこそ、長いコピーでも読み手に伝わり、受賞できたのかもしれません。と、書いているうちに胸が熱くなってまいりました!こちらこそ、お忙しい中インタビューに快くご協力していただき、本当にありがとうございました!! そして、最後に、梅津さんから。

北海道札幌市の広告制作会社でコピーライターをしています梅津遥(うめつはるか)です。
出身は富山県です!全国からお仕事募集中しております。
お気軽にtwitterのDMにてご連絡ください。
SMAPや新しい地図関係のツイートも多いですが、
フォローもぜひよろしくお願いします^^
※お仕事は会社として受けさせていただく形になります。
twitter→https://twitter.com/halcal1ume

 

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